呪われた十字架

2006年6月22日 月組
これは、めちゃめちゃしょうもない妄想伝説です。
読んでもお怒りにならないという自信のある方のみ、この先御覧下さい。

☆ ”☆”☆”

仏蘭西の或るお城に、何百年と幽閉されている殿下がいました。
彼は生まれながらの由緒ある家柄の貴族。
5歳上に、未来を渇望された優秀な長兄がいましたが、早くに戦死してしまったのです。
3歳上の次男は、父から受け継いだいくつかの土地を支配していましたが、
横暴、且つ、傲慢な振る舞いで、民からの非難の目を仰ぎ、彼らの手によって葬り去られました。
父は、最後の望みを、まだ幼い三男に託します。
この三男は、生まれたときから、美しい金髪に青い瞳を兼ね備えており、
成長するにつれ、そのクールな美貌は輝きを増すばかり。
加えて、非常に頭脳明晰で、物事の判断力・洞察力も人並み優れて優秀、
且つ、運動能力にも優れ、馬を自由自在に操り、正義感や勇敢さも兼ね備えたたくましい少年となり、家族だけでなく、やがて、民からも未来の救世主としての期待の目が向けられるようになりました。

ところが、彼にはもう一つの側面があったのです。
やがて、手に入れるであろう輝かしい栄光の陰に隠された、呪われた月の魔力。
孤独と狂気、大人になりきれない子どもの、今にも壊れそうな、その危うい精神性。

だがしかし、その兆候に気づいていたのは、
幼き頃から教育係として側に控えていた、リュウただ一人でした。

親の庇護や人々の期待の重圧に、耐え切れなくなった彼は、
次第に精神を病んでいき、壊れていってしまいます。
そして、ある満月の夜から、彼は城内の一番上にある、牢獄に閉じこもるようになったのです。

そこは、鉄網で覆われた小さな部屋。
朝と夕方のミサの時間には、鐘の音がゴーンゴーンと地響きのように鳴り響きます。
そこには、簡素なベッドと机、ワインのボトルが一つあるだけですが、
天井高くに備え付けられた窓からは、お月様が綺麗に見えます。

彼は、毎晩祈ります。
呪われたように、祈り続けます。
意味不明の言葉を、ひたすらに唱えて…。

やがて、民の間で噂が広まり始めます。
噂によりますと、どぅやら満月の夜が訪れる度に、美少年が姿を消すというのです。

話を牢獄に戻しましょう。

今夜もまた、一人の少年がやってきました。
年はせいぜい14〜15といったところでしょうか?
まだまだあどけない表情をしていますが、マリンブルーの瞳をしたとても美しい少年です。

「来たか…」
「はい、ご主人様。貴方様に命を捧げにやって参りました。」
「そうか…そんなところで怯えていないで、さぁ、こっちにおいで。可愛がってあげるよ。」
「はい…」

少年は、そっと静かに殿下のほうに歩み寄ります。
殿下は、自分の膝元に彼を抱き寄せます。

「ほら、見てごらん!…お月様が綺麗だろう。」
「えぇ、殿下。ですが、貴方さまのほうがもっと美しゅうございます。」
「良い子だ。…僕がこのまま、綺麗に殺めてあげるからね。」
「えぇ、殿下…」 (←彼は既に幻覚に陶酔している)

グサッ!!!!!!!   (首筋に牙を突き刺す音)

「ほら...とっても綺麗になったね。永遠に君を僕の闇の中に葬ってあげるよ。」

そこには、既に息絶えた少年がいます。

「ねぇ、リュウ…」
「ご主人様。…いかが致しましょう?」
「いつも通りに頼む。」
「承知」

彼は、手際よく少年を始末します。

「君は僕の忠実なる僕だ。…愛しているよ。」
「滅相もございません」

さらに、ある夜。

「ご主人様…」
「おお!リュウ…さぁ、入れておあげ」
「はい。」

今宵やって来た少年は、茶色の瞳。挑発的な視線を向けています。

「何をそんなに嫌がっているんだ?」
「お前、お前だな???罪のない民を虐殺しているのは!」
「気でも狂ったのか?坊や…私は、君たちを可愛がっているだけだよ。」
「よく言うぜ!俺は、あんたなんかに騙されない!」
「恐れぬというならば、真っ直ぐに私の瞳を見てみるがいい。」
「…よし、おとなしくなったね。さぁ、こっちへおいで…」

グサッ!!!
今宵もまた、何とも得体の知れない不気味な音が城内に響き渡ります。

こうして、理不尽に奪われていく、未来の若者の命。
リュウは、一人苦悩し続けます。

「俺だ…あの方を正気に戻すことができるのは、この世で俺だけだ。」

またもや満月の夜。
覚悟を決めたリュウは、獲物を持たずに、殿下の元に足を運びます。

「来たか、リュウ…」
「はい、只今参上いたしました。」
「今夜の獲物は、何だ?」
「いえ…殿下…。あの、今夜は何も持ってきておりません」
「何だと??(怒) よもや私の命令に背くとは言わないだろうなぁ」
「そんな…滅相もございません。
 ですが、殿下…どうぞ、これ以上の尊い命の犠牲はおやめ下さい。」
「いつもと様子が違うと思ったら、何を言い出すか…(冷笑)」
「私のお慕い申し上げていた方は、大変に素晴らしいお方でした。
 いつからこのように変わられてしまったのでしょう…いえ、あの夜から、
 あの夜から、閣下は確実に変わってしまわれたのです。」
「あの夜?ああ。私が悪魔に魂を捧げた、あの夜のことか。
 だがしかし、契約しているところを、お前もこの瞳で見ていたではないか。
 今更、何を言い出すのか。」
「ええ…あの頃の私は、貴方様をまだ何処かで信じておりました。
 だからこそ、見てみぬふりをしたのです。
 ですが…今の貴方様のお姿は痛々しい…お側で仕えていても胸が苦しいです。」
「ハハ!!お前にはこの快感が分からぬのか。
 あのゾクゾクとする興奮、高揚、これぞ神のなせる業だ!」
「貴方様は間違っております。どうか正気にお戻り下さい。」
「お前こそ、気が狂ったのか?この私に指図するなど…」
「厳しい懲罰は覚悟の上でございます。
 私はただ…本当の貴方様に戻ってほしくて…」
「本当の?笑わせるな!私が本当の私だ。」
「いいえ、貴方様は悪魔に呪われております。目を覚まして下さい。」
「ふ、馬鹿馬鹿しい。」
「そこまで私をお嫌いになられるのでしたら、どうぞ私の命をお奪い下さい。
 私の中にある血を、貴方様の魂に注げるのでしたら、それは本望です。
 そして、そのときに初めて貴方様は、私の切なる想いに気づくはずです。」
「そこまで申すなら、宜しい。飲んでやろう。
 さぁ、こっちにおいで…私の可愛い僕よ…これまで世話になったな。」

グサッ!!!
殿下の鋭い牙が、リュウの首筋に突き刺さります。
そして、その血を吸った瞬間、悪魔に囚われた殿下の呪いは消え去ります。

殿下の足元に転がるリュウの首。
そして、その瞬間、殿下は頭を抱えてうずくまります。

「な・な・なんということだ?!これは一体…
 そうか…自分で自分の手を殺めていたのか…なんていうことだ。
 おい!リュウ!リュウ!!!俺はなんていうことをしてしまったんだ。」

そして、精神錯乱状態に陥った彼はその場で狂死するのです。

それは、仏蘭西に伝わる、呪われた伝説。
今宵もまた、森深くの今は廃墟となったお城から、殿下の叫び声が木霊するのが聞こえるかもしれませんよ。

ウフフフフ…(恐いよ)

end

☆”☆”☆”

配役

殿下:大空祐飛
リュウ:越乃リュウ

長男:成瀬こうき
次男:緒月遠麻
少年1:彩那音
少年2:龍真咲
少年たち:凰稀かなめ・明日海りお・大湖せしる etc.

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