『暁のローマ』-其のニ-

(* 注)これは、私の独断と偏見に基づいたものです。史実などは無視しております。)

………

白。
それは、美しい色。
タカラヅカにおいての”白”も、この上もなく高貴な香りを奏でている。
THE LAST DAY。客席と舗道を埋め尽くす”白”の絨毯は、
華やかな聖なる美しさ、静かなひとときを演出する。

白。
それは、宗教の色。
禍々しい不吉さを秘めた、”虚構”の顕われ。
歓喜に酔いしれる民の魂が、統率者の魔術に囚われたとき、
”白”は狂気の沙汰へと変貌し、やがては、その力さえも超えて収拾がつけられなくなる。

………

原作がどうなっているのかは、知らない。
だが、私には、舞台に出てくるすべての登場人物が、”亡霊”にしか見えなかった。
そう、唯一人、ブルータス@アサコを除いて。

何ちゅーか、
時空の乱気流が、物凄ぉ〜く恐ろしくて。
確かに、現実に起こったすべてなんだけれども、
確かに。現実に生きていた人たちなんだけれども、
舞台の上で語られているのが、「リアルタイム」の空間ではなく、
すべてが、死ぬ瞬間の正気ブルータスが見た、自分の人生にまつわる者たちの亡霊
恐ろしいほどに陰湿な、悪夢のような幻覚に見えたから。

そこには、夢もあった。
そこには、希望もあった。
だけれども、ここ(舞台)は、鏡の世界。
みんな、生きているんだけれども、死んでいるのよ。
そんな中、唯一人、ブルータスだけは”正気”で、”生身の人間”なのよ。
そりゃ、恐ろしいって。

真剣に舞台に見入っていると、
知らない間に、自分までもが洗脳されそうになっている、この感覚。
たまらなく、刺激的だ。

”亡霊”たちと必死に闘っているブルータスの健気さと痛々しさが、またたまらなくいとおしい。

鏡の世界を破る者があるとすれば、それはアントニウス@きりやストラトーン@まさき
そう、暁〜において、主人公ブルータスに対する真のVSに値するのは、間違いなくアントニウスだと思う。

何故なら…
彼はカエサル暗殺の黒幕だから。
利己的欲望、異常なまでの権力への執着心。
自由自在に民を先導し、己の都合の良い方向へと引きずり込んでいく。
カエサルへの従順心も、巧妙に仕組まれた犯行計画の一部だったのではないだろうか。

カエサス暗殺に成功したカシウスブルータス

ブルータスは、広場で声高々と「正義の勝利。自らの理想とする社会信念」を歌い上げる。
彼の主張を支持し、歓喜熱狂する民たち、だがしかし、そこにも魔は潜んでいる。

彼ら(民)は、生身の人間ではない。
いまや、魔術によって操られる”亡霊”の塊に過ぎない。
正しい思考回路は、既に麻痺状態に陥り、”真実”を見極めることはできない。

そう、すべては、影の黒幕アントニウスの中に既に治められていたのだ。

突如、ブルータス演説広場に現れたアントニウスは、片一方で声高々にブルータスへの讃美(カエサルの追悼演説)を唱え始める。

それは、一種の暗示。
つまり、言葉の裏側に真の意味が隠されている、その名も”鏡文字”のようなもの。

★☆★
                                                                                                                        
「真実と真逆の歪んだ映像を視界に焼きつけさせて、歪曲。 
  事実を皮肉に捻じ曲げて、無理矢理、自らの君主(カエサル)を正当化に演出。
   亡き君主をここまで持ち上げた理由(訳)は、当然、
     以下のことを、世界に知らしめるため。」

”自ら”(アントニウス)こそが”真”の王である、ことを。



★☆★

…っとここで一旦切ります。
話が長くなるので、続きはあらためて。

コメント

最新のコメント

日記内を検索